第1713話

しかし、

その胸のざわめきは、

無残にも

すぐに打ち消された。


やっぱり、

久我山からの連絡は、

届いていなかった。


がっかりする気持ちを

誤魔化(ごまか)すように、


母親宛に、

これからタクシーで帰る、と、

短いメッセージを送った。


バスの来ないバスターミナルは、

異様なほどに静かで、

時おり、駅前通りの方から、

行き交うクルマのエンジン音が

低く聞こえてくるだけだった。


麻未は、スマホを鞄の中に戻すと、

どこを見るわけでもなく、

あたりの景色に視線を泳がせた。


心地よい夜風が、

時おり麻未の髪を撫(な)でている。


先頭に並んでいサラリーマンが、

音もなく静かにやって来たタクシーに

体を滑り込ませると、

タクシーはまた、音もなく動き出した。


麻未の隣でベンチに座っている、

20代後半から30代前半ぐらいの女性は、

ひたすらスマホと睨(にら)めっこだ。


麻未はまた、

久我山のことを

考えてしまった。








物語のあらすじ


とうじょうじんぶつ


第1話から読む
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第1712話 高卒AV女優

そのため、

交通の便 ーー 移動の便 ーー の良し悪しを、

感じる機会がそもそも少なかったのだ。


それでも、

四季折々の色彩を見せてくれる、

街路樹や木々、植物に囲まれた、

静かで、優しく穏やかな環境は、


のんびりした麻未の性格に合っていたのか、

麻未は、心地よさを感じていた。









タクシー乗り場には、

麻未の前にふたり並んでいた。


スーツ姿のサラリーマンらしき男性と、

麻未より少なくとも5〜6歳は年上に見える、

20代後半から30代前半ぐらいの女性だ。


ふたりとも、

手にしたスマホの画面を見つめながら、

せわしなく指を動かしている。


タクシー待ちの暇つぶしに、

ゲームでもしているのだろうか。

それとも、

家族への、連絡だろうか。


タクシー乗り場の硬いプラスチック製の、

半分ほど空いていた簡易ベンチに腰かけ、


麻未も、思い出したように、

鞄の中のスマホを探(さぐ)った。


ほんのかすかな期待を胸に、

スリープモードを解除する。


小さな胸が、

また、ざわつき始めた。








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