「あ、まだ高校生だから、ですね、」
「そかな、たぶん、」
「きっちりしてるんですね、そこは、」
「AVの話は、しないですよ、って、」
「へぇ、…………、」
麻未の記憶には、実際、
あいまいなところもいくつかあった。
麻未が、
初めてAV事務所にメールをしたのは、
麻未がまだ17歳、
高校3年生の秋ごろだった。
最近では、
スカウトなどを介(かい)さず、
AV事務所のホームページを見て、
女の子自ら問い合わせをしてくる
パターンは、実は結構あるのだ。
ネット環境が普及し、
大手零細にかかわらず、
たいていのAV事務所が
ホームページを持ち、
全国どこからでも、
女の子個人が直接、AV事務所と
やりとり出来る環境が整い、
相対的に、
路上に立つスカウトマンに、
AV事務所を紹介してもらう
必要性がなくなったのだ。
同時に、
スカウトマンの紹介による、
強引な契約や撮影強要など、
ごく一部の悪質な事例が後を絶たないことも、
スカウトを避ける傾向が、
女の子側にもあるのかもしれない。
そうしてメールを送った事務所のひとつが、
現在、麻未が所属しているAV事務所だ。
ただ当時、事務所としても、
まだAV女優にはなれない年齢の
17歳の高校生を事務所に呼ぶわけにもいかず、
いったんは断りの返信をしていたのだ。



物語のあらすじ



とうじょうじんぶつ



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