電車からはたくさんの人が吐き出される。
これから遊びに行くのだろうか。
きっと、これから仕事の人もいるだろう。
眠らない街、新宿なのだ。
麻未のすぐそばには、
サークルか何かの飲み会帰りだろうか、
お酒の酔いも醒(さ)めやらぬ、
大きな声でふざけ合う若者の集団がいた。
気分はまだ宴会中なのであろう、
声の音量調整機能も麻痺したままのようだ。
麻未は、
騒がしい集団と同じ車両に乗るのを避け、
少し離れた車両に乗り込んだ。
*
麻未が自宅にたどり着く頃には、
既に日付けが月曜日になっていた。
平日にはある深夜バスも、
日曜日である今日はなく、
バスの運行は、
23時すぎに既に終了していた。
麻未の自宅のある、横浜市内の新興住宅地。
駅から歩くには、少し距離がある。
麻未は迷わず、
バスロータリーの一画にある、
タクシー乗り場に並んだ。



物語のあらすじ



とうじょうじんぶつ



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