麻未が接してきた大人の男たちは、
父親と学校の男性教師、
そして、
高校生の時少しだけバイトで働いた、
クレープ屋の店長ぐらいだった。
信頼も、安心も出来ない、
そんな男たちばかりだった。
でも何故か久我山だけは、
初めて会った時から、
それまで会った男たちとは、
どこか違うような気がしていた。
親子と言っても差し支えないほど、
久我山とは年の離れた麻未のことを、
ひとりの女性として尊重し、
上から威圧(いあつ)するわけでもなく、
下から媚(こ)びへつらうわけでもなく、
麻未自身にまっすぐ向き合ってくれた。
それは、
初めて渋谷の喫茶店で会った時から、
ずっと変わらないままだ。
お互いに慣れてきたからと言って、
馴れ合いのようになることもなく、
それでも、
麻未に何か困ったことがあったら、
すぐに手を差し伸べてくれる、
そんな絶妙な距離感を、
当たり前のように、
さらりと保ち続けてくれた。



物語のあらすじ



とうじょうじんぶつ



第1話から読む